
日本銀行(日銀)の新総裁に指名された植田和男氏は、経済学者としての素晴らしい経歴を持っています。植田氏は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で学び、金融経済学を専門としています。また、スタンレー・フィッシャー氏の門下生であり、同じくフィッシャー氏門下のバーナンキ元FRB議長や欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁など、著名な経済学者たちと共通のバックグラウンドを持っています。元米財務長官のサマーズ氏は、植田氏を「日本のベン・バーナンキ」と評しました。
植田氏はMITでの学びの後、アカデミックな道を歩み、日銀審議委員を7年間務めました。彼が新総裁に就任すれば、フィッシャー氏の門下から中銀総裁がもう一人誕生することになります。
植田氏が日銀総裁としてどのような政策を運営するかについては、サマーズ氏が指摘するように、イールドカーブコントロール政策をいつまでも維持することはできないでしょう。世界的なインフレが起こっている中、日本も例外ではありません。拡大しすぎた日銀のバランスシートを縮小させつつ、インフレが拡大したときの対応は、困難を極めます。ここで、植田氏の実力が問われてくると考えています。
おそらく就任当初は黒田総裁の方針を変えることはないと思います。急激な金融政策転換は良くも悪くも劇薬です。おそらく徐々に転換をしていくと想像されますが、問題は時期とスピードです。現在米国でもインフレ対応への金融政策の時期とスピードがまさに注目されていますが、長期デフレ下にあった一時的なインフレと考えられている現在の日本において、このままインフレが進む場合、どの段階でどの程度の金融締め付けを行うのか非常に注目です。
金融引き締めは、当然ですが利上げとQTとなりますが、間違いなく起こるのが国債価格の下落と国債金利の上昇、そして景気への影響です。通常の国であれば、普通の対応ですが日本にとっては生死の境をさまようことになります。膨大な国債発行額への利払いによる国家予算への影響、銀行にとっては国債の価格下落による時価評価損、そして実体経済への影響と税収の落ち込みです。
植田新総裁の実力が試される時期が就任期間中に間違いなくやってくると予想され、黒田総裁の置き土産をどう処理していくか、注視していきたいと思います。
参考記事:記事リンクはこちら(Bloomberg)
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