本当に米国経済は強いのか?それとも強く見えているだけか?

米国経済の実態を株価は反映しているのか、それとも幻想と淡い希望に支えられているだけなのか、マクロ経済指標をもとに見直してみたいと思います。

CPI

1月総合CPI:前月比0.5%上昇し加速。さらに12月CPIも-0.1%下落から0.1%上昇に見直されており、物価上昇は加速していることが窺える。

1月コアCPI:前月比0.4%上昇し加速。さらに12月CPIも0.3%上昇から0.4%上昇に見直されており、物価上昇は加速していることが窺える。

全従業員実質収入前月比

前月比で0.7%増加した。これは、実質平均時給の変動と平均週労働時間の0.9%の上昇によるものです。

小売売上

総合小売売上は前月比1.7%上昇と前月の-1.1%から大幅改善。

コア小売売上はさらに上昇し前月比2.3%上昇。前月は-0.9%だった。

工業生産

FED工業生産前月比は1.0%の上昇で。12月はの-1.8%から大きく改善。

設備稼働率は78.3%と12月の78.4%からダウン。

実質所得前月比

実質所得は全ての所得(残業等も含む)から税金と物価上昇で調整されたもの。

このところマイナスか0.1%程度のプラスできていたところが1月に一気に0.7%の上昇。3ヶ月連続でのプラス。

在庫

企業在庫前月比(小売、卸売も含みます):前月比で既に20ヶ月プラスになっている。今月も前月比0.3%上昇。

小売在庫前月比(自動車を除く):10〜12月と在庫減少が続いてきたが1月から在庫の上昇が始まった。1月0.3%、2月0.4%と在庫が増えてきている状況。

在庫VS小売売上比率のグラフも添付します。如何に在庫の積み上げが増えてきていて、企業収益に影響しそうかわかると思います。

在庫VS小売売上比率のグラフ

住宅

住宅建設着工数前月比:昨年夏頃からマイナスが続いており、1月も-4.5%。不動産不況はまだ続きそうです。

住宅建設着工数前月比

建設許可前月比:着工許可に関してはキャンセルなどもあり得るため、軽めの先行指標として考えられています。1月は前月比1.0%、12月は前月比-0.1%でした。

PPI

総合PPI前月比:継続的におおよそプライス推移ではありましたが、1月分は急上昇し0.7%、12月は-0.2%。人件費と共に購買でも企業コスト増加が見られます。

コアPPI前月比:こちらも継続的にプラス推移です。1月0.5%、12月0.3%。

企業物価は全く下がる傾向がなく継続的にプラス推移となっています。

フィラデルフィア連銀

フィラデルフィア連銀ではペンシルバニア州、ニュージャージー州、デラウェア州と製造業の最も活発な地域のひとつです。様々な製造業に関わる調査を行っていますが、ここでは代表的な製造業景教指数を見てみます。

製造業景教指数前月比:今回景教指数が非常に落ち込み-24.3、前月は-8.9でした。

フィラデルフィア連銀製造業景教指数前月比

まとめ

製造業については思ったより良くないことがおわかりいただけたと思います。コスト増加、人件費増加、在庫増加で厳しい状況が、フィラデルフィア連銀の景況感に現れています。

一方で小売ですが、同じく在庫の積み上げが厳しいものの、個人の実質所得が上がっているため、おそらく製造業ほどの厳しさはない。ですが人手不足による人件費上昇が小売業界での頭痛のタネになっていることは容易に想像できます。おそらくですが在庫が増えて売上が上がっているのは、販売数量は変わらず物価上昇によるものが大きいと言えると思います。また製造業のコストアップはいずれ小売の一部でコストアップ要因として表面化してくるでしょう。

今はギリギリにバランスでインフレと賃金上昇が綱渡状態なのだと思います。なぜ企業が耐えられるか、これまでのQEによって各企業に資金余力があったからです。逆に言えばこの資金余力があるうちは、インフレ抑制に利上げ効果は薄いと思います。金余りがなければ即効果が出ることでしょう。