なぜインフレは鈍化しないのか?簡単な理由と難しい解決策

USD

なぜインフレは鈍化しないのか?

意外と簡単なインフレの鈍化しない原因
意外と難しい解決策

過去の関連記事

まずは見てほしいグラフがあります

企業ネットキャッシュフロー

税引き後企業利益

民間銀行の融資・貸出

個人収入

この4つのグラフからわかること

企業のネットキャッシュフローは潤沢にあり、企業の税引き後の利益も好調、銀行も貸出・融資を増やしている。また個人の所得も継続的に増えており、コロナ渦には政府援助により、収入が大きく増えていた、という過去と現在が分かります。

お気づきだと思いますが、この状態でインフレは抑制できると思いますか?答えはNOだと思います。お金が余っているのです。インフレ抑制に米国の世の中が動いているとはとても思えません。

次に見てほしいグラフです

失業率

求人

この2つのグラフからわかること

失業率は歴史的に見ても最低水準の3.4%、求人は昨年2022年の8月から上昇を始めました。大企業のレイオフという言葉をよく耳にしますが、これはホワイトカラーのレイオフが主体で、ブルーカラーの現場労働者に関してはいまだに人手が足りていない証左です。

インフレが鈍化しない原因

上記の結論からインフレの鈍化していかない原因が明確になったと思います。未来はわかりませんが、少なくとも過去、現在までインフレが継続しているのはこれらが要因です。

さて、要因はわかったものの利上げ史上最速で行ったにもかかわらず、なぜインフレは鈍化しないのでしょうか?

利上げの効果はパウエル議長、各連銀総裁、FRB高官も言っているように、効果にタイムラグがあります。したがって、効果が出るのが遅いのです。お金がまだまだ余っている状況で、元々効果の遅い金利を上げることは、さらにタイムラグを生みます。

利上げの状況

FF金利

逆イールド:米国債10年金利ー2年金利

米国10年2年逆イールド

利上げの進捗

パウエル議長の不退転の決意で史上最速のスピードで利上げを実施し、10年債と2年債の逆イールドは市場最高レベルに到達し、現在は-0.87%です。FRB、各連銀総裁、有識者の間では、さらなる利上げと長期化の声が大きくなってきています。

 クリック☞最高6.5%への米利上げ必要、学会・金融界エコノミストが論文で指摘

 クリック☞エラリアン氏、FRBが2%の物価目標実現できるか市場は疑問視

 クリック☞セントルイス連銀総裁、FOMCは「今すぐ行動を」-信頼回復が急務

 クリック☞米金利先物、あと3回の利上げ見込む水準 PCE価格指数受け

 クリック☞米国株式市場=反落、利上げ継続観測で 週間で年初来最大の下げ

 クリック☞NY外為市場=ドル上昇、FRB引き締め長期化観測

 クリック☞訂正-米金融・債券市場=利回り上昇、個人消費増加で金利先高観

利上げ以外の方法はないのか

実はコロナ渦で経済に懸念が始まった2020年3月に、米国は銀行の預金準備率を0%にしています。これは苦しい国民へ銀行が貸し渋りや貸し剥がしが起こらないように、円滑な金融活動を狙ったものです。しかし、実は現在もこれは続いています。いまだに預金準備率0%で信用供与を行っているのです。

現在行っているQTとともに、預金準備率を段階的に上げることで、銀行の信用供与(貸出)に制限をかけることができます。つまり企業は自己資金のキャッシュフローを使わざるを得ませんし、個人は借金をすることが難しくなります。

ご存じの通り個人はカードローン等のローン残高が急上昇しており、延滞率が高まっています。また、企業は設備投資に衰えがない状況です。下記が住宅を除く企業設備投資のグラフです。

私見としての結論

利上げ、これまでのQTとともに、預金準備率の引き上げは段階的に実施すべきと思います。預金準備率の引き上げは、M2マネーストックを引き下げる効果があるので、量的縮小QTの一部といえます。

ただ、米国では一度預金準備率の引き上げで危険な目にあっている経験があります。その点では難しい選択肢なのかもしれません。

参考にJPMの面白いお話を載せておきます。是非ご一読ください。FRBは利上げしつつ、預金準備率0%を維持することに関して、疑問を持たれるはずです。

クリック☞これから「レポ」の話をしよう①:♪All you need is leverage♪
クリック☞これから「レポ」の話をしよう②:♪All you need is leverage♪