
ロイターから引用「FRB議長、3月会合は指標次第で決定まだと強調 タカ派トーンは維持」
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ーー目次ーー
パウエル議長上下院の公聴会での発言内容を振り返る
ネコままです。
3/7-8で行われた、パウエル議長の上下院での証言を振り返り、現状をどう捉えているか、インフレ要因に関する情報、今後の方針に変化があったのかを検証してみます。議事要旨はロイターからの引用です。株式、債券市場にも大きな影響を持つFOMCの金融政策会合は非常に重要なイベントです。ここでパウエル議長の言葉から読み解いてみたいと思います。
上院公聴会での証言要旨(2023年3月7日)
証言要旨については、ロイターの「UPDATE 1-〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の議会証言要旨」からの抜粋です。
上院公聴会での証言要旨(2023年3月7日)
- 入手されるデータ全体によってより迅速な引き締めが正当化されると示唆されるなら利上げペースを高める用意がある
- 最終的な金利水準が従来想定より高くなる可能性
- 入手されるデータ全体と成長およびインフレの見通しへの影響に基づき、引き続き会合ごとに決断していく
- インフレ圧力を中心に最近の経済データは予想より力強い
- 全体的な1月のデータの力強さの一部は季節外れの温暖な気候を反映している可能性
- 住宅を除くコアサービスでは今のところディスインフレの兆候はほとんどない
- インフレ率を2%に回帰させるためには住宅を除くコアサービスのインフレを低下させる必要があり、労働市場も幾分軟化する可能性が非常に高い
- インフレ率を長期的に2%に回帰させるために十分制約的なスタンスを取るためには政策金利の持続的な引き上げが適切となる可能性
- 労働市場は引き続き極めて引き締まっている
- インフレ率の低下への道のりは長く、浮き沈みの多い可能性
- 物価安定の回復には制約的な政策スタンスを当面維持することが必要な可能性
- 過去の経緯から時期尚早な政策緩和は警戒される
- <以下は質疑応答>
- 供給と需要のミスマッチ、財(モノ)部門や労働市場で依然確認
- 仮想通貨分野では多くの混乱があり、注視している
- 時間をかけインフレを低下させるツールを持っている
- 2%のインフレ目標を達成する
- コアインフレはわれわれの期待ほど速いペースで鈍化しておらず、道のりはまだ長い
- 議会、債務上限を引き上げる必要
- 最大雇用を維持しながら、物価安定回復へできる限りの措置講じる
- 現時点でFRBの二大責務に矛盾なし
- 二大責務が矛盾する時期が来る可能性も
- 物価安定の責務達成にはなお非常に遠い
- 失業率を上昇させようとはしていない
- 求人件数など様々なチャンネルを通じて需要と供給を再調整しようとしている
- ディスインフレを起こそうとしている
- ここしばらくは財インフレの低下が見られている
- 住宅サービスのインフレ低下は今後6─12カ月の伝達経路内にある
- ただ住宅を除くコアサービスが今の課題
- 他部門に影響を与えずにこの部門に影響を及ぼすことはできない
- われわれの手段は力強いが鈍い
- 労働市場が軟化しない中で賃金は緩やかに推移
- 多くの異常な要因がインフレに影響しており、今後の展開は誰にも分からない
- 財(モノ)、住宅、より広範なサービス部門のインフレに注目し、より広範なサービス部門での動向を注視
- 利上げの完全な効果、まだ確認していない
- 金融政策効果の波及の遅れを注視し、利上げに際し考慮する
- コアインフレに注目
- 企業債務は急増していない
- FRBは銀行規制の調整に非常に力強くコミットしている
- データを見る限り過度な引き締めは示唆されていない
下院公聴会での証言要旨(2023年3月8日)
証言要旨については、ロイターの「情報BOX:パウエル米FRB議長の議会証言要旨」からの抜粋です。
下院公聴会での証言要旨(2023年3月8日)
- 3月会合前に重要なデータの発表がある
- (8日午前に発表された)米雇用動態調査(JOLTS)にまだ目を通していない
- 3月会合についてまだ何も決定していない、データ次第
- ターミナルレート(最終到達点)は予想を上回る公算大きい
- 非常に堅調な雇用統計とインフレ指標は同じ方向にある
- 議会による債務上限引き上げが唯一の策、苦境から抜け出す策は存在しない
- 債務不履行となれば、FRBが経済を守ることができると誰も想定すべきでない
- 中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行、議会の承認が必要
- FRB、銀行が気候変動に絡むリスクの管理を確実にする役割を担うが、その役割は極めて限定的
- 気候問題巡り、FRBの役割を注意深く守る
- 米ドルは世界の基軸通貨として唯一の存在
- 米、歳入がマイナスでも債務の支払い可能
- インフレ率は鈍化しつつあるが、非常に高い
- 労働市場の逼迫、高インフレの一因の公算大きい
- 全ての予測、年内に家賃の伸び鈍化を見込む
- インフレ抑制に失敗した場合のコスト、制御するコストよりもはるかに大きくなるだろう
- 物価押し下げにコミット
- 中国の速いペースでの経済再開は商品価格に上昇圧力をかけるが、サプライチェーンの回復加速させる可能性
- 中国に絡む影響、全体としては軽微と予想
- 金融政策効果発現にはタイムラグがあると認識
- 今年、金利上昇のペースを縮小しているのはタイムラグの影響をよりよく確認するため
- これまでに入手されたデータで、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が一段と高くなる必要があることが示されている
- 気候変動は議会の課題であると強く感じている
- FRBの独立性は重要
- FRBが2%としているインフレ目標に変わりはない
- 今はインフレ目標の変更を考える時期ではない
- レポ市場は最近、適度に機能
- インフレ抑制が極めて重要
- 債務上限危機解決に向けた1兆ドルのプラチナコイン(法定通貨)発行案は手品で「帽子からウサギを取り出す」ようなもの、そのような策は存在せず
- 供給不足とサプライチェーンの問題が改善すれば、企業のマージンは低下する見通しで、インフレ鈍化に一部寄与へ
- バランスシート縮小、順調に進んでいる
- 住宅ローン担保証券(MBS)購入は深刻な状況においてのみ
パウエル議長の方針に変更はあったのか?
結論:今回の証言からパウエル議長の方針に大きな変更は見受けられません。ただし、インフレ抑制に関して、特にコアで予想より進んでいないとの見解で、要因として「雇用」「コアサービス」の2つを上げています。今後の対応に関しては、特にターミナルレートが想定よりも高くなる点に関して2日間とも強く強調しています。また、制約的な金利を持続的に行っていく点に関しては変更がありません。
また中央銀行の二大責務である「物価の安定」「労働市場の安定」に関しては、今回のインフレ対策で矛盾が来る時期が来る可能性を明言しました。必然のことではありますが、覚悟の必要な発言だと思います。
注目点としては、利上げ幅は「高く長く」のうち、「高く」が強調され始めていること。また、実は以前のパウエル議長証言からも出ている「ツール」とはなにかです。おそらくQTや預金準備率の引き上げに関する内容だと思います。クリック👉これについては以前記事を書いいますので、そちらを参考にしてください。
下記に証言内容を「現状のインフレに対する見解」「インフレ要因への見解」「今後の対応に対する見解」の3つのカテゴリーに分けましたので、わかりやすいかと思います。
現状のインフレに対する見解
- インフレ率は鈍化しつつあるが、非常に高い
- コアインフレはわれわれの期待ほど速いペースで鈍化しておらず、道のりはまだ長い
- 住宅を除くコアサービスでは今のところディスインフレの兆候はほとんどない
- インフレ圧力を中心に最近の経済データは予想より力強い
- 利上げの完全な効果、まだ確認していない
- 金融政策効果発現にはタイムラグがあると認識
- 企業債務は急増していない
インフレ要因への見解
- 住宅を除くコアサービスが今の課題
- 労働市場の逼迫、高インフレの一因の公算大きい
- 非常に堅調な雇用統計とインフレ指標は同じ方向にある
- インフレ率を2%に回帰させるためには住宅を除くコアサービスのインフレを低下させる必要
- 他部門に影響を与えずにこの部門(コアサービス)に(だけ)影響を及ぼすことはできない
今後の対応に関する見解
- 入手されるデータ全体によってより迅速な引き締めが正当化されると示唆されるなら利上げペースを高める用意がある最終的な金利水準が従来想定より高くなる可能性
- 十分制約的なスタンスを取るためには政策金利の持続的な引き上げが適切となる可能性
- 過去の経緯から時期尚早な政策緩和は警戒される
- 時間をかけインフレを低下させるツールを持っている
- 3月(FOMC)会合前に重要なデータの発表がある
- 3月会合についてまだ何も決定していない、データ次第
- ターミナルレート(最終到達点)は予想を上回る公算大きい
- インフレ抑制に失敗した場合のコスト、制御するコストよりもはるかに大きくなるだろう
- 中国の速いペースでの経済再開は商品価格に上昇圧力をかける
- これまでに入手されたデータで、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が一段と高くなる必要があることが示されている
- 二大責務が矛盾する時期が来る可能性も