今話題のSVB傘下銀行シリコンバレー銀行の経営破綻

SVB破綻

今話題のSVB傘下銀行シリコンバレー銀行の経営破綻

引用:PHOTO: DAVID PAUL MORRIS/BLOOMBERG NEWS

起こるべくして起こった

ネコままです。

SVB傘下のシリコンバレー銀行の破綻が大きな話題になっています。銀行株に関しては、利上げが開始した頃から「米国の預金準備率が0%のままなのでご注意ください」と注意を促してきました。また、利上げだけではインフレ対策にはタイムラグが大きいこと、クレジットカード残高の上昇、返済延滞率の上昇が起こっており、預金準備率を上げることの必要性に関しても言及してきました。

引用:FRED クレジットカードの延滞率上昇

おそらく今回の問題の主因は金余りです。SVBは米国内で15番目に大きな銀行で、金余りが慢性的になっている状態で、シリコンバレーではVCなどの借り入れ需要が急減したのでしょう。そこで、シリコンバレー銀行は余ったお金で国債を買った結果、予想よりもハイスピードで金利が上がり、国債価格が下落したというのが今回のストーリーです。下記のMMFの急激な上昇を見ればわかりますが、リセッション時にMMFや国債に資金が集まるのは通常のことです。

引用:FRED MMFの急増

また目立って書かれていませんが、銀行間でお金を融通し合う機能を持つレポ金利も、今回の利上げでかなり上昇しています。SVBも保有の国債で資金調達を試みたかもしれませんが、この高金利では利払いだけでも苦しかったことと思います。

引用:FRED クレジットカードの延滞率上昇

金余りから始まった戦略ミスなので、2022年12月Q4のキャッシュフローなど見ても何も問題は見つかりません(Yahoo finance)。他の銀行に関しても同じ取り組みはあり得る話なので、金融系の株は気をつけるべきだと思います。

SVB破綻で何が起こるのか

SVBはベンチャー資金によるスタートアップへの投資において独特です。SVBは、預金の39%がテクノロジーおよびヘルスケアセクターの初期段階のベンチャー企業からのものであると報告しています。これらの企業は通常、営業資金を無利子預金としてSVBに保管しています。まずこの回収が困難となることで、関連する企業の破綻もしくはキャッシュフローの悪化で増資をせざるを得なくなり、株価は下落します。それが何社あるのかは知るよしもありませんが少なくともRokuは26%のキャッシュが現状SVBにあると発表しています。

預金者保護措置として連邦預金保険公社(FDIC)は、上限250,000USDまでしか保護しません。企業に取ってはないものも同然です。また、シリコンバレー銀行の預金の93%が銀行規制当局によって保険をかけられていないことを示唆する報告もあり、全く何も保護されない可能性も残っています。

来週以降続々とSVB関連の企業名が上がってくると思います。その中にはRokuのような有名なスタートアップも含まれることでしょう。また、市場は現在それに構えています。

やはり手を付けなくてはならない

金余りは未だ米国に存在し続けています。それは思ったほどQTが進んでいないことにあります(そもそもQTが小さすぎる)。FRBは毎月950億ドルのQTを進めると昨年初頭に発表しましたが、当初の進捗は約50%。現時点は毎月950億ドルをほぼ達成できていますが、進捗が遅れていることは事実です。

QTは基本的に企業、国民を苦しめるだけで消費者保護にはなりません。両輪として預金準備率を2.5%程度に上げるだけでも、かなりの信用引き締め(貸出信用を引き締めて、貸し倒れを防ぎ、破綻時の消費者預金保護を行うこと)効果が得られるはずです。QTと同時に本来実施すべきだと私個人は思います。

次回FOMCでSVB破綻に関して必ず議題に上がるでしょう。その際に、預金準備率の引き上げが議論されることを切に願うところです。

下記はWSJからの記事の抜粋です。

FREDデータに関しては「マクロデータページ」もご参照ください。

[WSJ] SVB傘下シリコンバレー銀破綻、市場に走る動揺

銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行が経営破綻した。投資家とアナリストは銀行業界における危機の連鎖を懸念し、他の金融機関にも厳しい目を光らせている。

 ベンチャーキャピタル(VC)やVC出資のスタートアップへの融資を手掛けるSVB傘下のシリコンバレー銀行の危機を受け、他の金融機関にも同様の問題が飛び火するとの懸念から、米株式市場では銀行株に連想売りが広がった。

 SVBが抱える問題の発端は、コロナ禍で流れ込んだ大量のマネーだ。SVBはその資金を元手に米長期債を購入したが、金利上昇に伴い債券価格が下落した。

 今年に入って予想以上のスピードで顧客が預金を引き揚げ始めると、SVBは保有していた一部の有価証券を売却せざるを得なくなり、損失を計上。これが9日の米株市場でSVB株の急落を招いた。さらに、一部のVC投資家がスタートアップ企業に対してSVBから資金を引き揚げるよう助言しており、取り付け騒ぎへの懸念が高まった。

 シリコンバレー銀行が8日に緊急の増資計画を発表する前から、投資家はすでに神経をとがらせていた。大手銀行の2022年10-12月期(第4四半期)決算は景気後退(リセッション)を見込んだ悲観的な内容だった。そこに、暗号資産仮想通貨)を扱うシルバーゲート銀行の親会社、米シルバーゲート・キャピタルが事業閉鎖を発表したことで、懸念が一気に高まった。

 米経済は堅調を維持しているが、多くの投資家はリセッションが迫っているとみている。SVBを巡る危機は、08年の世界金融危機の記憶を呼び起こすものだ。当時はまず地銀の経営難が露呈し、後に米金融大手と世界の金融システムへと危機が波及していった。

 米証券会社キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズ(KBW)のトレーディング部門責任者、R・J・グラント氏は「シリコンバレー銀行は優良銀行と考えられていた」とし、「08~09年の世界金融危機では、ある銀行の悪いニュースが別の銀行の悪いニュースを示す前兆となった」と指摘した。

 シルバーゲート銀行とシリコンバレー銀行には二つの共通する特徴がある。これが次の危機を警戒する投資家の詮索をかき立てる要因となっている。一つはコロナ禍で活況を呈したものの、米連邦準備制度理事会(FRB)による急ピッチの利上げで業績が大きく低迷した業界を主な取引先としていた点だ。

 シルバーゲート銀行は暗号資産企業、シリコンバレー銀行はテック関連のスタートアップ企業で、顧客が一斉に預金を引き揚げるようになり、資金繰りに大きな負担がかかった。

 二つ目の共通点は、コロナ禍で預金が流入する中、どちらも米長期債や住宅ローン担保証券(MBS)などの有価証券に投資したことだ。だが、FRBによる昨年からの急ピッチの利上げに伴い、これらの債券価格が下落。預金者への支払いに必要な資金を迅速に調達することが難しくなった。

 投資家は危機の連鎖を懸念し、他にもこの二つの特徴を有する金融機関がないか、目を光らせている。

 イエール大学の金融安定化プログラムの研究者であるスティーブン・ケリー氏は、金利が急速に上昇する環境において、一部の銀行が経営危機に直面するのは驚くことではないと指摘する。

 「FRBは非常に明確に金融環境を引き締めようとしている」とし、「その取り組みが金融機関にも作用しないはずがない。最も過熱気味だった市場に関連する金融機関から、影響が表れ始めるのは当然だろう」と述べた。

引用:SVB傘下シリコンバレー銀破綻、市場に走る動揺