SVB破綻で米当局が預金者保護へ動く!

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ついに動き出した米当局、預金者保護へ!

ーー目次ーー

SVB経営破綻と脆弱な預金者保護

SVBの経営破綻に関して、当局者、管財人が入り現在整理を行っています。これから一体どれくらいの企業や個人が影響を受けるのか徐々に明らかになると思います。米国の預金保護に関しては、連邦預金保険公社(FDIC)は、上限250,000USDまでしか保護しません。またSVBはベンチャー企業のための銀行の側面が大きく、預金に対して93%が保険に加入していないとの報道もあります。イエレン米財務長官の強気の発言(イエレン米財務長官、銀行システムの「強靱さ変わらず」-波及懸念せず)にもかかわらず、米連邦預金保険公社(FDIC)と連邦準備制度理事会(FRB)は即時に預金者保護に動き出しました。

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引用:米下院歳入委員会で証言するイエレン財務長官 Photographer: Al Drago/Bloomberg

利上げが及ぼす銀行への影響

FRBはインフレ抑制のために利上げをこれまでにない異例のスピードで進めてきました。これにともなって、企業側のキャッシュフローの悪化、消費者のインフレに伴う信用力低下が起こることはわかっていたことでした。同時に銀行のキャッシュ調達に伴うコスト上昇も構造的に発生します。レポなどで保有国債を使ってキャッシュを入手する術は、国債価格が維持できればそう難しいことではありません。しかし、利上げペースが早く、ターミナルレートも5%を超えるとの幾度とないFRB、連銀総裁の警告にも関わらず、市場は信じることはありませんでした。しかし時間が経つに連れて当局者の話が現実味を増すことが示唆される経済指標が次々と発表され、国債価格はどんどん値下がりました。

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引用:CNBC「Silicon Valley Bank is shut down by regulators in biggest bank failure since global financial crisis (cnbc.com)

SVBの特異性と破綻との関係

これにともなって、銀行の資産価値は国債の評価損により傷つけられ、厳しい状況に追い込まれます。ただし、実際にはQTがそれほど進んでいないので、キャッシュポジションを高めにしておけば、何の問題もないのですが、SVBの場合は都合が違います。新興企業、ベンチャー企業、ベンチャーキャピタルからの預金が39%と特異な状況で、この預金に関しては融資した企業のキャッシュを無利子預かりしたものです。いわば、新興リスク企業からの無金利預金です。銀行に取って、リスクテイクしている分を何かで儲けたいと思うのは当然でしょうし、新興企業の倒産は一定の割合あるわけですから、その分運用で余裕資金を生み出すのは当然です。そこで、SVBは国債の購入に踏み切りました。この考えは、前述した通り米金融当局者が警告してきた利上げのスピード、ターミナルレートを甘く見た事によるものです。しかし、国債価格は下がり続け大幅な評価損となっていきました。

FRBも連銀も読みが甘かった利上げによる銀行への影響度

利上げによる銀行の構造的な危機は基本的に想定をしておくべきです。現在米国内では、「貸出金利は上げているのに、預金金利は全然上がらない」と米国内で銀行への批判が高まっています。これは当然の批判です。そして実際米金融機関の決算は良かったですね。これは総合的にマネージメントできている銀行はその通りです。

一方で、SVBは新興企業への融資がメインですので、おそらく高金利と新興企業特有のキャッシュ不足、赤字、などの状況で融資ボリュームは他の銀行と比べれば大幅に減ってきたと思われます。バランスシート的に考えれば、貸出(資産)が減ったので預金(負債)を抱える力がなくなったということです(バランスシート上では貸出は資産であり、預金は負債と扱います)。とは言え、このため資産である国債を売ってキャッシュ化する、もしくはレポ市場で国債を貸し出してキャッシュを借りることも、国債価値の減損で思ったようにできなかったのでしょう。

このような事例は今はSVBのような得意な銀行だけに発生していますが、他の通常の銀行に関しても、融資先企業の業績悪化等で融資がどんどん滞ることで同じことが起こりえます。当局FRBや連銀は予想はしていたと思いますが、動きがおそすぎたと思います。本来利上げと預金者保護は同時に行われるべきであると私個人は思います。

預金者保護基金の創設への疑問と本来のあり方

今回のブルームバーグニュースによると「米連邦預金保険公社(FDIC)と連邦準備制度理事会(FRB)はシリコンバレー銀行(SVB)の破綻を踏まえ、経営難に陥った銀行の預金保護を強化すべく基金の創設を検討している。」とのことですが、本来預金準備率を0%から上げることが最も効果的かつ、FRBの目指すインフレ抑制にもつながると思います。ただし、実施前に預金準備率を上げることによるストレステストは必須事項です。時間がかかります。したがって、基金創設という話へとなったと勝手に想像をしています。

クリック👉SVBへの記事に関しては、昨日の記事もご参考に。預金者保護に関しても言及しています。

最後に

最後に、ついにここに来たかという印象です。利上げによる銀行の業績悪化は以前より見込んでいました。しかし、市場参加者や銀行を含む金融企業関係者は、FRBや連銀総裁が必死に伝えている「インフレ退治は長期に及ぶ」という話を信じませんでした。この歪がSVBの破綻として現れたと言うことは他の銀行、金融機関が今後同じ状況にならないとは、断言できない状況に入ったと考えておくべきかと思います。