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ネコままです。いよいよFOMCですね~。FOMCの前に、現在の私なりの現状把握をしておこうと思います。以前のSVB破綻問題の記事はこちらを。
金融不安の現状
シリコンバレーバンク(SVB)とシグネチャーバンクの破綻から預金者救済、クレディスイスのUBSによる買収など、紆余曲折がありながらも米国・スイス当局の今回の動きは非常に早かったです。ここは非常に評価すべきだと思いますし、リーマンショックから学んだことなのでしょう。
一方で、米国FRBのDiscount Window(割引窓口)による貸し出しが毎週水曜に更新されますが、3月15日データで1529億ドルにも膨らんでいる事実が明るみに出ました。リーマンショックの残高を超えたことになり、過去最高です。FRBは今回Discount Windowによる貸し出し要件を大幅に緩和、貸出期間も延長し、SVB破綻に端を発した預金者の逃避と米国債の潜在的損失で苦しむ中小銀行が、救いを求め大量に押し寄せたというところだと推測されます。
Banks tend to tighten lending standards after having to borrow at the discount window and I suspect this time will not be different. The cascade impact is a slowing economy, more difficult business conditions, and a higher amount of unemployment moving forward. pic.twitter.com/IbJHIVvzsX
— Markets & Mayhem (@Mayhem4Markets) March 18, 2023
これは中小金融機関の経営状態が良くないことを表しており、米国の金融機関で今後SVBのような破綻が続く可能性を示唆しています。特に預金者の中小銀行から大手銀行への逃避は、信用不安が原因です。信用不安は心理的現象で、ただでさえインフレで苦しむ米国民は神経質になっており、この手のニュースは今のスーパーハイスピード情報社会では、瞬く間に国民を動かしたと容易に想像できます。
仮にこのまま資金逃避が中小銀行で続けば、非常に危険な状態に陥ります。Discount Windowによる貸し出しも金利はかかりますので、すべて補えるわけがありません。
預金者受け入れ側の大手銀行にしても、預金者が増えても、肝心な投資がシュリンクしているので、融資先がありません。つまり預金者に金利は払う必要がありますが、肝心の収入を作れないのです。このような状態は大手銀行にとっても健全ではありません。預金金利を下げざるを得ないという事となります。
クレディ・スイスはUBSへの吸収が決まったものの、160億フラン(約2兆2700億円)にも及ぶAT1債(Additional Tier 1)を無価値にすると発表しました。株式は少なくとも資産価値は残りますが、AT1債は価値を失うことで、大きな損失を被る企業、投資家が大量に出ることとなります。この件については民事的な裁判に発展する可能性をはらんでいると思われます。
この影響で世界的に銀行のAT1債の売りが発生しています。日本でも信用不安を懸念し、金融庁から今回のクレディ・スイスの問題に関して日本への影響は限定的だとして、守勢に入りました。
象徴的な仮想通貨高
この間、仮想通貨(特にビットコイン)が暴騰しています。金も値上がりしています。この2つの資産に共通しているのは、政府も国も関係ないことです。何かに依存していないことが、いま求められているものという事だと私は解釈しています。
ビットコインは最たるもので、非中央集権の仮想通貨なので、国も中央銀行も民間銀行も景気も国民も何もない、完全独立のただの通貨です。そこに「安全」という価値を見出しているというのが現状なのだと思います。評価というのは常に相対的ですので、「現状の世界経済と比べて安全」という事です。
ものすごく面白い現象です。ちょっと前までは仮想通貨は安全ではないという意見が大多数だったと思います。それはセキュリティ的な面でもあると思いますし、価値が見いだせないという意味でもあると思います。簡単に燃えてなくなるただの紙が、紙幣に変わった瞬間といえるかもしれないですね。
今晩のFOMC
FOMCに関して、市場のコンセンサスは0.25%の利上げが多いようです。最も重要なのはドットチャートです。現状の金融状況からドットチャートをどう描いてくるのか、とても楽しみです。
利上げ、利上げ停止、いずれにしても株価には良い影響はないと考えています。どちらもよい連想を生み出すようには思えないからです。利上げならさらに当然株価は下がるでしょうし、利上げ停止としても銀行懸念が増幅されると思います。それよりも影響が大きいのはドットチャートで、今回利上げでも、利上げ停止でも、結局はその先に利上げ・利下げ・維持のいずれかが待っているわけですね。FOMCメンバーがどのように未来を描いているか、どのように市場へ意思表明をするのか、期待と不安をもって発表を待ちたいと思います。