【仮想通貨業界と米当局の規制強化の思惑】

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はじめに

仮想通貨業界における規制強化が進んでいます。マネーロンダリング防止(AML)やテロ資金供与防止(CFT)のために、米国をはじめとする世界各国の規制当局が新たな規制を打ち出しています。本記事では、仮想通貨業界における規制強化の重要性や規制強化の背景と現状、今後の展望、規制強化が仮想通貨業界に与える影響について考察します。

規制強化の背景と現状

現状の米国の法規制は、仮想通貨に対する統一的な規制枠組みがなく、連邦政府と州政府の間で規制当局や法律が異なるという複雑な状況にあります。連邦政府の規制当局としては、FinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)、SEC(証券取引委員会)、CFTC(商品先物取引委員会)、IRS(国税庁)などが仮想通貨に関与しており、それぞれが仮想通貨を資金移動業、証券、商品、資産として定義し、それに応じた規制や報告義務を課しています。州政府の規制当局としては、各州の金融機関監督部門や司法部門が仮想通貨に関する法律やライセンスを定めており、州によって仮想通貨に対する姿勢や要件が大きく異なります。例えば、ニューヨーク州では仮想通貨事業者に対してビットライセンスと呼ばれる厳格なライセンス制度を導入しています。

このように米国内で仮想通貨に対する規制がばらばらであることは、仮想通貨事業者や投資家にとってコストやリスクを高める要因となっています。そのため、米国では近年、仮想通貨への規制強化や整合性の確保を求める動きが高まっています。特にバイデン政権下では、仮想通貨が金融システムや国家安全保障に与える影響を懸念し、規制当局が積極的に介入しています。

仮想通貨業界における規制強化は、AML/CFT対策や投資家保護のために行われています。一方で、規制強化の思惑は国や地域によって異なります。米国では、仮想通貨が金融システムや国家安全保障に与える影響を懸念し、規制当局が積極的に介入しています。例えば、CFTC(商品先物取引委員会)は、DeFiプロトコルによるレンディングサービスに対して規制の適用を検討しており、規制強化が予想されます。SEC(米国証券取引委員会)は、仮想通貨を証券として扱うかどうかの判断を下すことで、仮想通貨市場に影響を与えています。

DEXにおけるAML/CFT対策と審査の必要性

DEX(分散型取引所)は、中央集権的な取引所とは異なり、ユーザー同士が直接取引を行うことができる仕組みです。しかし、その分AML/CFT対策が困難であるという問題があります。規制当局はDEXの運営者に対して審査を行うことで、AML/CFT対策の徹底を求めています。例えば、米国のFinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)は、DEXに対してAML/CFTの義務を課す提案を行っています。また、日本では仮想通貨交換業者と同様にDEXも金融庁の登録制度に基づく規制対象となっています4。

デリバディブ、先物取引に対する規制強化の現状

デリバディブ(金融派生商品)や先物取引に関する規制強化も進んでいます。例えば、米国のCFTCは、仮想通貨デリバティブ取引に対して登録制度を導入することを検討しています。これにより、取引所の登録や許認可が必要になるなど、仮想通貨市場がプロフェッショナル化することが期待されます。投資家保護の観点からも、規制強化は重要な課題です。日本では2022年5月から金融商品取引法が改正され、仮想通貨を対象とする先物取引やデリバティブ取引について規制強化が進んでいます。

日本の仮想通貨市場の規制環境

日本の仮想通貨市場は、2017年に行われた改正資金決済法により、法定通貨と同等の扱いを受けるようになりました。また、金融庁が仮想通貨交換業者に対して充実した監視体制を導入しています。さらに、日本では仮想通貨を「資産」と位置付け、課税対象としている点も特徴的です。これにより、仮想通貨市場の透明性が高まり、投資家保護にもつながっています。

今後の展望と世界的な協調

仮想通貨業界における規制強化は、業界の発展にとって重要な課題です。一方で、規制強化が業界に与える影響や、規制当局や業界関係者がどのような対応をすべきかについては、まだ明確な答えが出ていません。規制強化は、業界にとってチャンスとなる一方で、脅威ともなり得ます。規制当局や業界関係者は、規制強化を受け入れつつも、業界の発展と投資家保護のバランスを取りながら、適切な対応を模索する必要があります。

世界的な規制に対する協調は、国際通貨基金(IMF)やG7などの国際機関やグループが仮想通貨に対するグローバルな規制枠組みの構築を求めているという状況にあります。IMFは仮想通貨が金融システムや国際決済に与える影響やリスクを検討し、仮想通貨に対する法定通貨の地位を否定し、仮想通貨規制について国際的な協調が必要だと主張しています。G7は2023年5月に広島で開催されるサミットで、より厳しいグローバル仮想通貨規制のための協力戦略を構築する予定であることが報道されており、金融安定理事会(FSB)や国際決済銀行(BIS)などとも連携して、デジタル資産の標準化に向けて動いています。

しかし、規制に対する世界的な協調は容易ではありません。仮想通貨に対する各国の姿勢や法律はまだ統一されておらず、仮想通貨の定義や分類も異なります。また、仮想通貨は国境を越えて流通するため、規制当局の管轄や監督も難しくなっています。さらに、仮想通貨の技術的な進化や多様化も規制の追随を困難にしています。そのため、規制に対する世界的な協調は、仮想通貨の特性や利益を考慮しながら、各国の法律や規制当局の役割を調整し、デジタル資産の透明性や消費者保護を高めるとともに、金融システムや国家安全保障に対するリスクに対処することが求められます

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まとめ

本記事では、仮想通貨業界における規制強化の重要性や背景と現状、今後の展望、規制強化が業界に与える影響について考察しました。仮想通貨業界にとって、規制強化は重要な課題であり、規制強化を受け入れつつも、業界の発展と投資家保護のバランスを取りながら、適切な対応を模索する必要があります。

参考記事:仮想通貨は米国外で大きな関心を集める可能性|アナリストが指摘 | CoinPartner(コインパートナー) (coinotaku.com)

用語解説

  • AML/CFT: Anti-Money Laundering/Combating the Financing of Terrorismの略で、マネーロンダリング防止やテロ資金供与防止を意味します。
  • DeFiプロトコル: Decentralized Finance Protocolの略で、分散型金融プロトコルを意味します。
  • SEC: Securities and Exchange Commissionの略で、米国証券取引委員会を意味します。米国の証券市場を監督する組織です。
  • DEX: Decentralized Exchangeの略で、分散型取引所を意味します。中央集権的な取引所と異なり、ユーザー同士が直接取引を行うことができる仕組みです。
  • FinCEN: Financial Crimes Enforcement Networkの略で、金融犯罪取締ネットワークを意味します。米国財務省の機関で、マネーロンダリングやテロ資金供与などの防止を目的としています。
  • デリバディブ: Derivativeの略で、金融派生商品を意味します。金利や株価などの指数を基に、将来の価格変動に応じた契約を結ぶ商品です。
  • 先物取引: 特定の日に決められた価格で将来の商品の買い付けをする取引方法です。契約を締結した日に、取引する商品の買い付け価格を定め、決められた日に買い付けをする方法です。

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