新興国市場には今年に入って大きな資金が流入している。中国の経済活動が再開し、世界的な物価上昇圧力が鈍ったことが追い風となっている。一方で、景気後退のリスクや政治的な不安定さも存在し、新興国資産の値上がりが持続するかどうかは不透明だ。

リフィニティブ・リッパーのデータによると、1月は新興国市場の株式ファンドに132億ドル、債券ファンドに113億600万ドルが流入した。いずれも月間ベースで約1年ぶりの高水準だった。昨年は、債券ファンドが差し引き262億2000万ドルの流出に見舞われている。

新興国資産の割安化やドルの弱含み、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ打ち止めと米国債利回り低下などが想定される中で、今年は資産価格が押し上げられると予想するアナリストも多い。

ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジョシュ・ルービン氏は「世界経済の成長が鈍化しても、新興国株のバリュエーションは今年改善する余地があると信じている。それを主導するのは物価の下振れとドルのピークアウト、主要な政治イベント通過、地域内の構造的変化などだ」と述べた。
その上で「台湾と韓国は半導体やハードウエア技術セクターの業況回復の恩恵を受けるはずで、ブラジルは中国以外の主要新興国として来年最初に金融緩和サイクルに突入する可能性がある」と説明する。
リフィニティブのデータによると、新興国市場の企業は今年の増益率が11.9%と、米企業の8.9%や欧州企業のマイナス2.2%をかなり大きく上回ると見込まれる。
1月はiシェアーズ・コアMSCI新興国市場上場投資信託(ETF)とiシェアーズJPモルガンUSD新興国市場債券ETFにそれぞれ32億ドルと24億ドルが流入した。
流動性の高いドル建て新興国債券は、米国債利回りの低下に伴って需要が高まっている。JPモルガンの新興国債券指数(EMBI)の利回りは、昨年末の5.6%から1月末には5.0%まで下落した。この指数は、新興国の政府や政府系機関が発行するドル建て債券を追跡するものである。

ドル建て新興国債券に投資するメリットは、為替リスクを回避できることや、信用力の高い発行体から高い利回りを得られることである。また、新興国の経済成長率が先進国よりも高いことや、インフレーションが抑制されていることもプラス要因となる。
しかし、ドル建て新興国債券にもリスクは存在する。例えば、ドル高や米国債利回りの上昇が資産価格を圧迫する可能性がある。また、新興国の政治的な不安定さや財政赤字の拡大などが信用力を低下させる恐れもある。
そのため、ドル建て新興国債券に投資する際には、各国の経済状況や政策動向を注意深く分析する必要がある。また、地域やセクター、期間などに分散投資することでリスクを軽減することも重要である。
ドル建て新興国債券は、先進国債券よりも高い利回りを提供する一方で、為替リスクを回避できる魅力的な投資対象である。しかし、その背景には様々なリスクが潜んでおり、慎重な選択と管理が必要である。新興国市場に資金が流入する中で、ドル建て新興国債券の動向に注目したい。
参考記事:アングル:新興国資産、1月は1年ぶり大規模資金流入 中国が支援 | ロイター (reuters.com)
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