新国債発行で金利・インフレ・為替はどうなる?米国債務上限問題の解決とその影響

目次
1. 米国債務上限問題が解決!新国債発行の衝撃とは?
2. 債務上限問題とは何か?デフォルトのリスクと影響
3. バイデン政権と共和党の対立を乗り越えた債務上限問題の解決策
4. 新国債発行で金利はどうなる?金融引き締めの可能性とその影響
5. 新国債発行でインフレはどうなる?物価上昇圧力の抑制とその影響
6. 新国債発行で為替はどうなる?ドル高が進むとどうなるか?
7. 6月のFOMCで示されたドットプロットと追加利上げの影響は?
8. 新国債発行の影響をまとめてみた!
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1. 米国債務上限問題が解決!新国債発行の衝撃とは?

アメリカ政府は、議会との合意により、債務上限問題を解決しました。これにより、政府は2025年1月まで無制限に借り入れることができるようになりました。しかし、これは同時に大量な新国債の発行を意味します。新国債発行は、金利や為替、インフレ、輸入物価など、経済や金融に大きな影響を与える可能性があります。この記事では、新国債発行がどのような影響を及ぼすか、そしてその背景にある米国債務上限問題とは何かについて解説します。

2. 債務上限問題とは何だったのか?デフォルトのリスクと影響

債務上限問題とは、アメリカ政府が国債などを発行して借金できる上限が決められていたことで、この上限を引き上げるためには議会の承認が必要でした。

しかし、当時のバイデン政権と野党・共和党の間で財政規律や歳出削減などをめぐって対立が続いており、議会が上限の引き上げに応じない場合、アメリカは債務不履行=デフォルトに陥る恐れがありました。

デフォルトとは、国債の元本や利息の支払いができなくなることを指します。これは、アメリカ国債の信用格付けや金融市場に大きな影響を及ぼす可能性がありました。

アメリカ国債は信頼性が高い安全な資産として知られています。その価格や利回りの動向は世界の金融市場で指標となっていたほか、世界中の投資家や外国政府が保有し、重要な資産運用先となっています。

このため投資家などのあいだで仮にデフォルトが意識されると世界の金融市場に大きな混乱を引き起こすおそれがありました。 特に銀行破綻が相次ぎ金融不安がくすぶる中では国債を保有するアメリカ国内の銀行の経営をさらに悪化させるなど深刻な事態を招くことになりことが懸念されていました。

3. バイデン政権と共和党の対立を乗り越えた債務上限問題の解決策

債務上限問題をめぐっては、バイデン政権と共和党の対立が長く続いていました。バイデン政権は、新型コロナウイルス対策やインフラ整備などの大規模な財政支出を行うために、債務上限の引き上げや一時的な廃止を求めていました。一方、共和党は、財政赤字の拡大やインフレの加速を懸念し、歳出削減などの財政規律の強化を条件に債務上限の引き上げに応じることを主張していました。

この対立は、アメリカ国債のデフォルトが迫る中でも解決されませんでしたが、バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長が再三にわたって協議を行った結果、先月28日に合意しました。

合意内容を反映した法案は議会下院で31日に超党派の議員の賛成多数で可決されたのに続いて1日、議会上院の本会議で採決が行われました。与党・民主党が主導権を握る上院でも、与野党双方の一部の議員が反対しましたが、バイデン大統領や、議会指導部の説得もあり、超党派の議員が賛成して無事可決されました。

法案は政府予算について、2024年度は国防費以外の歳出を2023年度とほぼ同額にするなど支出を抑えるかわりにアメリカ政府の債務上限を2025年1月までなくし、政府が借り入れることができる額を事実上、引き上げる内容となっています。

これによって来年秋の大統領選挙までこの問題をめぐる政治対立は避けられることになります。

4. 新国債発行で金利はどうなる?金融引き締めの可能性とその影響

新国債発行で金利に与える影響については、新国債の供給過剰によって国債価格が下落し、利回りが上昇するというシナリオが考えられます。

国債価格と利回りは反対方向に動く関係にあります。つまり、国債価格が下がれば利回りは上がり、国債価格が上がれば利回りは下がります。これは、国債の元本と利息の合計額は一定であるため、価格が下がれば割安感から需要が増え、その分利回りも高くなるからです。

新国債の発行は、市場における国債の供給量を増やします。これによって、国債の需給バランスが悪化し、国債価格が下落する可能性があります。また、新国債の発行は財政赤字の拡大やインフレ期待の高まりを意味するため、投資家はより高い利回りを求めるようになります。

このようにして、新国債の発行は国債利回りを上昇させる要因となります。これは、アメリカの金利水準を高くし、金融引き締めの効果をもたらす可能性があります。

金融引き締めとは、金利を上げることで貸出や消費などの経済活動を抑制し、インフレや景気過熱を防ぐことを指します。しかし、金融引き締めは同時に経済成長や雇用などにも悪影響を及ぼす可能性があります。

5. 新国債発行でインフレはどうなる?物価上昇圧力の抑制とその影響

新国債発行でインフレに与える影響については、金利上昇やドル高によって物価上昇圧力が抑制されるというシナリオが考えられます。

金利上昇は、貸出や消費などの経済活動を抑制し、需要の減少につながります。これは、物価の上昇を抑える要因となります。また、金利上昇は、インフレ期待を低下させる効果もあります。インフレ期待とは、将来の物価の上昇率に対する予想や信念のことです。インフレ期待が高まれば、賃金や価格の引き上げ要求が強まり、インフレを自己成就的に引き起こす可能性があります。逆に、インフレ期待が低下すれば、賃金や価格の引き上げ要求が弱まり、インフレを抑制する効果があります。

ドル高は、輸入品の価格を下落させる効果があります。これは、アメリカの輸入コストを低減し、輸入物価指数(CPI)などの物価指標に反映されます。輸入物価指数は、アメリカで消費される輸入品の価格変動を測る指標です。輸入物価指数が下落すれば、消費者物価指数(CPI)などの総合的な物価指標も下落します。

このようにして、新国債発行は金利上昇やドル高によって物価上昇圧力を抑制する要因となる可能性が高いと考えています。これは、インフレ率を低く抑える効果をもたらすでしょう。

6. 新国債発行で為替はどうなる?ドル高が進むとどうなるか?

新国債発行で為替に与える影響については、金利上昇や米国債の需要増加によってドル高が進むというシナリオが考えられます。

金利上昇は、ドル建て資産の収益性を高める効果があります。これは、ドル建て資産への投資需要を増やし、ドルの需給バランスを改善します。また、金利上昇は、他国との金利差を広げる効果もあります。これは、他国の通貨からドルへの両替需要を増やし、ドルの価値を高めます。

米国債の需要増加は、ドルの安全な避難場所としての役割を強める効果があります。これは、不安定な経済や政治情勢に直面した投資家がリスク回避的な行動をとり、ドルや米国債などの安全な資産に資金を移すことで起こります。また、米国債の需要増加は、米国債の価格を上昇させる効果もあります。これは、米国債の価格と利回りが反対方向に動く関係にあるためです。

このようにして、新国債発行は金利上昇や米国債の需要増加によってドル高を進める要因となるでしょう。これは、ドルの価値を高くし、為替レートに影響を与え、さらなる円安、ドル高が進む要因となると予想します。

7. 6月のFOMCで示されたドットプロットと追加利上げの影響は?

新国債発行による金利上昇やドル高に加えて、FRBによる金融政策の引き締めもインフレや経済成長に影響を与えます。

FRBは、6月に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、インフレ率や経済成長率などの予測値を示すドットプロットを発表しました。ドットプロットとは、各委員が予想する政策金利の水準を点で表したグラフです。

FOMC 2023.6 Dot plot

ドットプロットによると、FRBは今年あと2回の利上げを予定しています。これは、前回発表されたドットプロットよりも利上げのピークが高まり、年内の利下げがなくなったことを意味します。前回の2023年末の金利予想中央値は5.125%、今回は5.625%と0.5%上昇しています。また、FRBはPEC(個人消費支出)物価指数の2023年末の予測中央値は3.2%と若干下方修正されたものの高止まり、変動が激しい食品とエネルギーを除いたコアPECは3.9%と上方修正されています。これは、FRBが目標とする2%を大幅に上回る水準です。

FRBによる利上げは、金融引き締めの効果を強める効果があります。利上げは、貸出や消費などの経済活動を抑制し、インフレや景気過熱を防ぐことができます。しかし、利上げは同時に経済成長や雇用などにも悪影響を及ぼします。

また、利上げは、金利差やリスク回避などの要因によってドル高をさらに進めるでしょう。ドル高は、輸入品の価格を下落させる効果がありますが、同時に輸出品の競争力を低下させる効果もあります。これは、アメリカの貿易収支や経常収支に影響を与える可能性があります。

このようにして、6月のFOMCで示されたドットプロットと追加利上げは、インフレや経済成長に影響を与える可能性が非常に高く、経済や金融市場に影響を与える可能性があります。

8. 新国債発行の影響をまとめてみた!

この記事では、米国債務上限問題の解決と新国債発行が金利やインフレ、為替に及ぼす影響について解説しました。以下に主なポイントと含意をまとめます。

  • 債務上限問題は、アメリカ政府が借金できる上限が決められていることで、議会の承認が必要だった問題です。
  • 債務上限問題は、バイデン政権と共和党の合意により解決されました。これにより、政府は2025年1月まで無制限に借り入れることができるようになりました。
  • しかし、これは同時に大量な新国債の発行を意味します。新国債発行は、経済や金融に大きな影響を与える可能性があります。
  • 新国債発行は、国債価格の下落や利回りの上昇というシナリオが考えられます。これは、金融引き締めの効果をもたらす可能性があります。
  • 金融引き締めは、貸出や消費などの経済活動を抑制し、インフレや景気過熱を防ぐことができます。しかし、金融引き締めは同時に経済成長や雇用などにも悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 新国債発行は、ドル高というシナリオも考えられます。これは、輸入品の価格を下落させる効果がありますが、同時に輸出品の競争力を低下させる効果もあります。これは、貿易収支や経常収支に影響を与える可能性があります。
  • また、FRBによる利上げもインフレや経済成長に影響を与える可能性があります。FRBは今年あと2回の追加利上げを予定しています。これは、金融引き締めやドル高の効果をさらに後押しすることになるでしょう。

以上が、米国債務上限問題の解決と新国債発行が金利やインフレ、為替に及ぼす影響についての解説でした。この記事がお役に立てれば幸いです。

追記:私の懸念は円安の歯止めです。このお話はまた後日!

参考外部記事:

 年内に2回の利上げを想定=FOMCの経済見通し・FF金利予想 – FEDウォッチ – 時事エクイティ (jiji.com)

 Summary of Economic Projections, June 14, 2023 (federalreserve.gov)

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