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米国には3つの大きな爆弾が爆発寸前になっています。雇用、企業倒産、商業オフィスローンの3つです。これらすべてが、長年のQEと低金利によるバブルから火種が始まった爆弾です。※住宅バブルはすでに弾けたので、上記からは除きました。
雇用、企業倒産、商業オフィスローンの3つの爆弾がすでに大きなインパクトを与えつつあることを、この記事ではご説明したいと思います。
1.雇用
米国の労働市場はまだ減速の兆しを見せていません。2023年5月、雇用者数は前月比で339,000人増となり、エコノミストが予想していた190,000人を大きく上回りました。5月の雇用増加は幅広い業界で見られ、特にプロフェッショナル・ビジネスサービス、政府、ヘルスケア、レジャーとホスピタリティ業界で大きな増加が見られました。2023年の初めから5月までの間に、平均して月に312,000人の雇用が増えています。これは2021年や2022年の月平均増加数(それぞれ605,000人と399,000人)からは減少していますが、パンデミック前の2019年の月平均163,000人よりはかなり高い水準です。
2023年5月のISM製造業景況指数は46.9で、前月より0.2ポイント低下しました。これは市場予想を下回る水準で、2020年5月以来の低さです。新規受注や生産も減少傾向にあります。一方、米国製造業PMIは46.3で、前月より1.3ポイント低下しました。これも市場予想を下回る水準で、2020年4月以来の低さです。雇用や在庫も減少傾向にあります。
これらの指数からわかることは、米国の製造業はコロナ禍や金融政策の引き締めなどによって減速しており、不況圏に入っているということです。
2.企業倒産
2023年の5月には54の企業が破産申請を行い、これは前月の52件からわずかに増えています。また、2023年の年初から5月までの期間での破産申請数は、2010年以降で最も多い年となっています。特に消費者向けの企業が37件の破産申請を行っており、これは2023年における他のセクターをリードしています。また、産業部門でも、Monitronicsなど8つの企業が破産申請を行い、顕著な増加を示しています。
2023年Q1の米国企業の利益について調べました。米国の企業収益は、2023年Q1には前期比で-6.8%減少し、前四半期比で-0.9%減少しました

また、銀行の貸出金と預金の比率(LTD比率)が上昇しており、流動性が低下しています。これは、預金が減少し、貸出金が増加したことによるものです。また、商業不動産ローンや消費者向けローンの滞納率も高くなっており、貸倒れや倒産のリスクが高まっていることを表しています。
3.商業用不動産ローン
米国において、商業不動産ローンや消費者向けローンの滞納率が上昇しています。米国モーゲージ銀行協会によると、2022年第4四半期には、米国商業用不動産向けの貸付総額が589兆円(1ドル=130円換算)に達しています。また、2022年上期の商業用不動産向け新規融資は過去最高の3160億ドルでしたが、金利上昇により、主要銀行は商業用不動産融資を縮小しています。さらに、米抵当銀行協会の報告書によれば、米国の銀行が保有する商業不動産ローンの融資残高(4兆4000億ドル)の8割近くを中小規模の銀行が占めており、今年から来年にかけて、商業用不動産ローンの借り換えがピークを迎えることが予想されます。
オフィスビルの大手機関所有者であるBrookfield Corp.やPacific Investment Management Co.などは、今年に入って大規模なオフィスビルローンの返済滞納が発生しています。また、WeWork Inc.とRhone Groupの共同事業がサンフランシスコのオフィスビルのローンで返済滞納となっています。
これらのローンの返済滞納は、商業抵当債権保有者に対しても支払いが滞る可能性を引き起こしています。商業不動産証券化のためのすべてのローンの滞納率は、Treppの最新のレポートによれば、過去3年で最も急増しています。
また、最新のTreppの記事によれば、CMBS(商業用不動産担保証券)の2023年5月の特別サービシング率は前月比で0.49ポイント上昇し、6.11%となりました。これは今年4回目で最も大きな月次増加であり、6か月前は4.95%、12か月前は4.76%でした。特別サービシング率とは、CMBSに担保されたローンのうち、滞納やデフォルトなどの問題が発生しているものの割合を示す指標です。
この商業用不動産ローンの問題は中小銀行へダメージを与え、再び信用不安を再発させる可能性があります、その場合のインパクトは大きく、今後注視すべき市場といえます。
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