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半導体業界の巨人「TSMC」が決算を発表しました。決算内容を見ると、先行で落ち込みの見られたPC用汎用半導体以外にも、TSMCの製造する高性能半導体の領域でも落ち込みが見られるようになっていることが分かります。
この記事では半導体などハイテク関連銘柄の株式投資に興味のある方向けに、今後の半導体業界の先行きを私なりに考察してみたいと思います。
TSMCの決算内容
TSMCは、2023年第1四半期の純利益が2069.9億台湾ドル(約7,500億円)であることを発表しました。売上高は5,086.3億台湾ドル(約18,500億円)で、前年同期比3.6%増加し、純利益と希釈後EPSはそれぞれ2.1%増加しました。ただし、前四半期に比べて、売上高は18.7%、純利益は30.0%それぞれ減少しました。
第1四半期の売上高は16.72億米ドルで、前年同期比4.8%減少し、前四半期比16.1%減少しました。
第1四半期の粗利益率は56.3%、営業利益率は45.5%、純利益率は40.7%でした。
第1四半期における5ナノメートルの出荷量は、総ウエハ収益の31%を占め、7ナノメートルは20%を占めました。 7ナノメートル以下の総ウエハ収益の51%を占めました。
「当社の第1四半期ビジネスは、マクロ経済環境の低迷とエンドマーケット需要の低下により影響を受け、顧客が需要を調整するようになった」「2023年第2四半期に移行するにつれて、顧客の在庫調整がさらに影響を与えると予想されます」とTSMCのWendell Huang副社長兼最高財務責任者は述べています。
会社の現在のビジネス展望に基づいて、経営陣は2023年第2四半期の全体的なパフォーマンスを以下のように予想しています:
- 売上高は15.2億米ドルから16.0億米ドルの間になる見込み
- 粗利益率は52%から54%の間になる見込み
- 営業利益率は39.5%から41.5%の間になる見込み
TSMC Q1 2023 Earnings Conference Call(決算説明会)
決算説明会のTSMCの業績については先の通りです。ここでは決算説明会で気になったワードを取り出してみましょう。
・私たちは第2四半期も顧客の在庫調整によって影響を受けると予想しています。現在のビジネス見通しに基づき、第2四半期の収益は、中間点で前期比6.7%減少すると予想されています。
・台湾での低い稼働率と高い電力コストが原因です。2022年下半期に15%の電力価格上昇があり、今年4月1日から17%増加しています。高い電力コストからの影響は、今年下半期を通じて続くと予想される。
・セミコンダクターの循環的な稼働率低下
・3か月前、ファブレス半導体在庫が2022年第4四半期に徐々に減少し始め、2023年上半期にはより急激な減少が予想されていると述べました。しかし、マクロ経済環境の弱化とエンドマーケットの需要の低下により、ファブレス半導体在庫は第4四半期に増加し、私たちが予想したよりもはるかに高いレベルで終了しました。
・中国の再開からのエンドマーケットの需要回復も私たちの予想よりも低いです。したがって、2023年上半期のファブレス半導体在庫調整は、以前の予想よりも長くなる可能性があります。
・2023 年の通年では、メモリを除く半導体市場の予測を 1 桁台半ばの下落に引き下げ、ファウンドリー業界は 1 桁台後半の下落と予測しています。 現在、2023 年通期の収益は米ドル換算で 1 桁台前半から半ばの割合で減少すると予想
今後の半導体の動向は?
決算説明会のキーワードを見ると、顧客側の在庫調整、そして半導体メーカーの在庫調整が予想より悪化していることがわかります。
またセミコンダクターの循環的な稼働率の低下、つまりシリコンサイクルの谷に入り始めていることを示唆しています。需要も明らかに悪化しているようであり、期待していた中国のコロナからの回復も期待を下回ったようです。これらの要因により予想よりも半導体需要低下は長く続く可能性が予想され、さらに電力コストが収益を圧迫するだろうと言うことです。
カンファレンスコールではTSMCの強みを強調する内容も出ていましたが、今回は業界動向を把握するのが目的ですから、この点は除いています。
総じて言えることは、半導体のシリコンサイクルに変化が生じてきていると言うことです。シリコンサイクルとは5〜8年で起こる半導体の山と谷です。今回の山は2018年ごろから始まっており、そろそろ谷が始まる警戒期間に来ています。
実際に谷が始まるかは世界経済の情勢によって変わりますし、何か爆発的なイノベーションなどでも変わります。AIについては別記事を書くつもりですが、ChatGPTの開発者のアルトマンがコメントした通り、巨大AIに関しては限界に来ているとの見解で、違う方法で今後のAIを実現すべきといことを示唆しています。
今の状況が大きく変わらない条件ですが、半導体に関しては今後徐々に下落すると予想しています。特にASMLやラムリサーチなどの半導体製造装置メーカーに関しては、現時点の決算はかなり良いですが、発注主は半導体製造メーカーであることを考慮して考えると、遅行して決算が悪くなる可能性も付け加えておきます。
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