米国マクロ経済:製造業の不振で高まる失業率と上昇する株価。この流れは持続可能か?

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ネコまま@リテラシーです。皆さんこんにちは。先週は日本は線状降水帯の影響で雨が大変でした。被害を受けた方は本当に大変だと思います。我が家も影響を受けないとは限りませんから、普段から非常食など準備しておくべきだなと思いました。
今日は米国の雇用統計も出そろって、マクロ経済指標から今後の米国経済を占ってみたいと思います。

さて、先週の状況ですが6月2日に発表された米国の雇用統計は失業率が+0.2%と予想を上回る結果となりました。結果を受け、米国株式市場は6月FOMCでの利上げ観測が後退し、株価は上昇しました。一方で、製造業は各連銀から発表される各州製造業インデックスが急激にマイナスとなり、製造業には大きな影響が出ていることが浮き彫りになってきています。その結果で失業率の上昇となっている可能性は大きいと思います。

下にマクロ指標をグラフで列挙しました。内容を私なりに解釈してみます。

・物価についてコアPCEは再び上昇基調。インフレが意識される状況になっています。先週の雇用統計で利上げはないという方向に株価は動きましたが、実際の物価状況を再度理解しておく必要があります。

・雇用状況について:失業率は予想外の0.2%上昇となりました。一方で、求人に関しても上昇。製造業の状況悪化の一方、サービス部門の求人はまだ旺盛であると考えられます。製造業からサービス業への雇用のシフトが進むと想像されます。ただ、雇用のミスマッチで、失業率はあがり続ける可能性も否めません。この場合、失業保険申請件数が増えると見ています。

・企業業績について:企業利益は縮小を続けており、銀行の貸出信用引き締めで、キャッシュフローの弱い企業は業務拡大というよりは、縮小方向に向かうのは間違いないと思います。また小売売上が縮小する中、小売売上に対する在庫率は上昇基調をたどっており、企業の重しになっています。在庫そのものは減っていることは付け加えます。つまり、分母になる売り上げが縮小していることが大きな原因です。

・個人の動向について:個人消費が伸び続けておりこれに伴って、クレジットカードの残高は相変わらず増え続けています。「実質」可処分所得が増え続けており、個人は厳しいながらまだ余裕はあります。ただ、このグラフから見えてこないのは、中下級層の状況がどうなのかは見えてきていません。富裕層との格差は広がる一方なのかもしれません。同時に預貯金率は上昇しています。実質可処分所得が増えた分の内、預貯金に回す割合が増えているのは、今後の米国経済への不安の表れだと思われます。

・マネーストック:M2マネーストックはQTが進むにつれ、徐々に下降に向かっています。一方で、貨幣流通速度は上昇を始めています。コロナ給付から急激に膨張したマネーストックと極端に低下した貨幣流通速度が、平常状況に戻る方向へ動き出したところです。しかし、まだまだ始まりの一歩です。

・ミシガン大期待インフレ:ミシガン大の期待インフレは下がってきていましたが、ここにきて上昇をが始めました。実質可処分所得が増加し続けている一方、コアインフレが再び高止まりを示したことで、今後のインフレにも不安を感じていると言えます。預貯金率の上昇がこの不安を感じさせます。製造業のPayroll(給与)が3月に続いて、5月も再びマイナスになり、製造業従事者は給与面でも不安を感じる状況に変わりつつあります。

まとめ

純粋にマクロだけ見ると、ちょうど企業業績の悪化の入り口に差し掛かり、製造業は先行して従業員の給与カットが始まったようです。一方で大手IT、テック、金融企業は従業員の削減に先行で舵を切り、利益率をなんとか維持する方向で動いています。ただ追加削減も発表されていますので、今後も要注意です。これにAIブームが運よく重なり、大手テック企業はマイナスを帳消しにできるかどうか、というところかと思います。この流れがNasdaq指数の上昇を引き起こしたと思われます。

次に投資先としての米国ですが、今後考えられるのは、製造業、コモディティ、小売企業の株価下落かなと思われます。忘れてはいけない中国のこのところの株価の不振は、この製造とコモディティの業界に大きな影響を与えると考えています。また、不動産、特にビジネスオフィス不動産は暴落が続いており、これは構造的な問題で仕方のないことです。米国の場合、オフィスビルは借り換えを前提に成り立っているのですが、現状の金利では借り換えを迎えるオフィスは投げ売り状態になっています。銀行としても貸出を締め付けていますので、構造的に投げ売りせざるを得ない状況で、これに不動産企業が耐えられるのか注目されます。

では、現在のダウ、SP500、Nasdaqに買い向かえるかというと、失業率が上がりだした今から買い向かうのは賢明ではないと思います。業績悪化で解雇が進み、失業率が上がり、消費が抑えられ、インフレが頭打ちになり、利下げの流れですから、次の失業率が再度上昇するようだと、いよいよ本格的に業績が悪化して「くる」、もしくは悪化して「いる」ことを警戒すべき時期に入ったと考えたほうがいいでしょう。

中国の株価低迷は個人的に少し驚きでした。世界中で期待していたコロナからの経済再開ですが、世界的に製造業が落ち込む中、世界の工場とまで言われた中国は大きな影響を受けていますね。唯一円安で日本だけが元気なのが対照的で面白いなぁと思ってみています。今年の初め頃は、2023年からはアジアが強いという声も多く聞きました。経済は本当にその時にならないとわかりませんね

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